失敗することが怖くて逃げてしまう。そんな自分が嫌になる。その心の裏には何が潜んでいるのでしょう?

失敗が恐れから経験へと変わっていく時。

認知行動療法

●なぜ失敗を過剰に恐れるようになるのでしょう?

 

 人は誰でも失敗はしたくないものです。それでも生きていれば新しい事やハードルが高いと感じられる事にも挑戦していかないと、生きることが窮屈になり世界も広がっていきません。「自分はそれでOK、それが私の生き方です」と言うのであればそれはそれで全然OKなのですが、自分が求めている自分と、現実の自分が違っている場合は問題となってきます。求めている自分になるべく努力を積み重ねて近づいていく、それを成長と呼びます。しかし、いくら努力して克服しようとしても、一人では出来ないことがあるのも事実なのです。やがて、出来ないことに疲弊し、自分にも周囲にも絶望してメンタルを病んでいくケースも実際に存在します。

●なぜ、努力しても恐れを克服できないのでしょうか?

 まず問題となるのは努力の方法です。「失敗するのを恐れないようにするには勇気が必要だ。怖がりだからいけないのだ」、「恐れがなくなるまでに完璧に準備すればよい」、のように自分に言い聞かせたり神経質なまでに完璧さを求めたりする方もいらっしゃるのではありませんか?しかしこれはある意味逆効果でもあるのです。そのように取り組めば取り組むほど恐れは強化されていきます。もちろんそのような方法で取り組んで恐れを克服される方もいらっしゃるかもしれませんが、ここで紹介する「恐れ」とは恐れの質が違うのです。ここでの恐れは、大げさではなく生死にかかわるほどの恐れと同義語なのです。命が脅かされる恐れ、恐怖は人間の本能として克服は出来ません。これは癌を宣告されて時間をかけてその恐怖と取り組んでいくものともまた違います。ある意味、銃や刃物を突き付けられているのに近い恐怖かもしれません。

●失敗することへの恐れがトラウマとなっている可能性があります。

 トラウマとは過去の恐怖体験が身体の中に刷り込まれて、その体験を想起させるような事を目にすると、まさに今目の前でその恐怖体験が起こっているかのように感じる症状を現わします。過去、主に幼少期に失敗(子供の頃は出来ないのが当たり前でそれを失敗とは呼びません。全てが経験となるのです)すると、親が過剰に反応して叱責したりなじったり、あるいは落胆した表情を見せると、子供は拒否されたように感じます。子供は親の保護無くしては生きていけないことを本能的に理解しているので、それは親が考えている以上に恐怖体験なのです。特にその状況が長期間にわたって続くと、トラウマ、つまりPTSD症状の中でも回復が難しいと言われている複雑性PTSDの様相を呈することになります。つまり失敗することへの恐れ、恐怖がトラウマとなっている可能性があるのです。

●トラウマは身体そのものに染みわたっています。

 トラウマは神経の奥深いところに根付いているので、理性で克服しようとしても限界があります。つまり身体が恐怖反応を起こしてしまうのです。このことからもわかるように、失敗する恐怖を勇気で克服しようとしても無理が生じるのです。むしろ、克服しようとすればするほど恐怖に意識が向き、さらにその恐怖を強化することになってしまいかねないのです。根性論でどうにかなるものではないのです。

●解決方法はあるのでしょうか?

ここまで読まれた方の中には、「それでは解決はないではないか、その恐怖と一生付き合わなくてはならないのか」と憤りを感じた方もいらっしゃるのではないでしょう?でも、あきらめないでください。トラウマ(複雑性PTSD)改善に向けた心理療法は存在します。丁寧に時間をかけてご自身の奥深いところに存在する心の傷と向き合って癒していくのです。傷と向き合う事は時に痛みが生じる作業でもあります。そのためにカウンセラーはクライエント(当事者)の方に寄り添いながら痛みを分けるようなイメージでトラウマケアに取り組んでいくのです。

●失敗が経験に変わるとき。

 過去のトラウマが癒されていくと、失敗した時の経験も過去のものと整理されていきます。その時の恐怖体験も今、現実に起きているものではないことが理解できるようになっていきます。すると、今までは失敗して自分にダメ出しをしていたのが、この経験を次に生かそうなどの前向きな思考に変化していきます。最初はもちろん意識しながらですが、それを繰り返していくうちにその思考に上書きされていくのです。

そこまで到達するまでにくじけそうになることもあるかもしれませんが、その時はその思いをカウンセラーに話してください。カウンセラーはドクターのように治療のための指示を出す存在ではありません。そのように言うと落胆する方もいらっしゃるかもしれませんが、カウンセリングはその方の内面に備わっている良くなろうとする力に働きかける支援をする存在なのです。時には一緒に悩みながら取り組んでいく事もあるかもしれません。取り組むことがなにより解決のための鍵となります。

 

ここまでお読みいただいた方の中で、カウンセリングの関心を持たれた方、問題の解決に取り組んでみたい方がいらっしゃいましたら、お気軽にウェッピーカウンセリングルーム日野・東京までお問い合わせいただけましたら幸いです。あなたの心が少しでも癒されますように。