愛着障害の苦しみへのカウンセリングの取り組み
愛着障害は、精神科医のボウルビィが提唱したアタッチメント形成に問題が生じたことによる障害を指します。ここで言うアタッチメント(愛着)とは乳児の頃に養育者(親)との間に結ばれた情緒的な絆の事を指します。乳児の時期に限らず、幼少期から子供時代の養育者との愛着の形成は大切で、そこに問題が生じるとそれは生涯にわたって影響を及ぼすことになります。特に情緒面の安定や人間関係の安定した構築に問題が生じ、自分自身を苦しめることになります。社会生活を送ることがままならなくなるほどであれば、障害と呼べるかもしれませんが、多かれ少なかれ人間関係問題の根底にはこの愛着の問題が隠れていることが多く見受けられます。ここでは、愛着の問題とその回復に向けたカウンセリングのご紹介をいたします。人間関係で悩まれている方がいらっしゃいましたら、ぜひご一読いただきたく思います。
●愛着の問題から生じる生きづらさとは?
愛着が健全に形成されていると、人との間に信頼関係を築きやすく、お互いの事を尊重し合える健康的な関係を築くことが出来ます。しかし、健全な愛着が形成されなかった場合は、必要以上に相手を警戒して他者とのコミュニケーションを回避しようとしたり(反応型アタッチメント障害)、あるいは初対面の人に対してもなれなれしい態度を取って近づきすぎたりと(脱抑制型対人交流障害)、適切な人との距離感がわからずに生活を営む上においての生きづらさが生じます。
また、無条件で自分自身を大切に感じられる心、つまり自尊心や自己肯定感が健全に育っていないので、常に漠然とした不安感や孤独感に悩まされていることがあります。時にはそれが怒りとなって現れることもあります。生きづらさからアルコールなどを過剰に摂取してアルコール無しには生きていけなくなるなどの依存症や、強迫神経症などの神経症と呼ばれる障害の根底には、この愛着の問題が隠されていることがよく見られます。
●愛着の問題の要因となるのは?
健全な愛着は養育者との関係において、主に乳幼児期に形成されます。養育者の情緒に波があったり、放任的であったり、または過剰なまでの溺愛、それに反して虐待などが見られると、健全な愛着が形成されないまま育つことがあります。また、乳幼児期に限らず養育者との関係から生じる影響は子供時代を通してその後も続くことになります。
しかし、完璧な親などは存在しないし、たとえ養育者が愛情を持って子供に接していても、子供自身にその愛を受け止める力が欠けている場合もありますので一概に養育者の影響だけとは言えない部分もあります。
●愛着の問題に対して大切なことは?
愛着の問題で大切なことは、先にも述べましたが自尊心が育っていないという事です。自尊心は乳幼児期、子供の時期に養育者から無条件の愛情を受けることによって健全に育っていきます。例え注意されたり怒られたりしても、自分を想ってくれているものなのか、それとも憎しみからのものなのかを子供は敏感に感じ取ります。それに、そもそも自尊心自体を感じる力が弱い場合も考えられます。愛着の問題をかかえている方にまず必要なことは、自尊心を感じる力を育てることにあります。それには何が必要なのでしょうか?
●愛着の問題に対して必要な存在とは?
愛着の問題を抱えた方にとって大切な事。それは自尊心を育むことだと述べてきました。では、そのために必要な存在は何でしょう?それは、自分にとっての安全基地の存在です。本来であれば、乳幼児期に養育者からの適切な愛情を受けることにより、最初は養育者が子供にとっての安全基地になります。養育者に自分の要求を受け入れてもらい、守ってもらう事によって自分は存在していてもよいのだ、自分は大切な存在なのだ、というような感情が芽生え育まれてきます。そして、成長するにしたがって段々と安全基地としての親から巣立っていき、その対象は友人や恋人、パートナーなどへと変化していきます。そして大切なことは安全基地としての対象はいたとしても、自分自身の中に安全基地が既に存在しているという事です。それこそが、乳幼児期から子供の時期にかけて養育者との関係において育まれた自尊心なのです。それだから、安全基地としていた友人やパートナーがいろいろな理由で自分から去っていったとしても、やがてその痛みを乗り越えて生きていくことが出来るのです。しかし、自尊心、つまり自分の中の安全基地が存在していないと、その痛みに耐えられずにストーカー行為に走ってしまったり、自分自身を破壊するような行動に出てしまったりすることがあります。
●カウンセリングによる愛着の問題に対する取り組みとは?
カウンセリング全般を通して言える事ですが、まず大切なことはクライエント(相談者)とカウンセラーとの信頼関係を築くことです。それは、やはりある程度時間をかけて丁寧に行う事が必要になっていきます。愛着の問題を抱えていると、他者との間にバリヤーを張ったり、逆に他者との距離が近すぎて結論をすぐに出したりと、カウンセラーとの信頼関係が結ばれる前にカウンセリングを取りやめてしまうケースもあります。そこはカウンセラーのスキルや相性も確かに存在するところではありますが、やはりカウンセリングでまず必要なことはカウンセリングの場を通して信頼関係を築いていくことにあります。その信頼関係を通して、カウンセラーを安全基地として捉えてもらうことが大切であり、認知行動療法や交流分析などの心理療法を通してのご自身の生きづらさの大元になっているものへの気づきや、新しい考え方や行動への取り組みのベースとなっていくのです。
人は一つ安定した安全基地を持つと、それを広げていくことが出来るようになります。安全基地が広がっていくと、それまで人との間に張っていたバリヤーが薄くなったり、逆に近すぎた距離感が適切なものへと変化したりしていきます。また、常にあった不安感や孤独感が和らいでいき、それに伴う怒りの感情も和らいで今までよりも、もっと気楽に人と付き合えるようになったり社会生活を送ることが出来るようになっていったりします。
また、安全基地の対象は人だけでなく、自分の事を文字にして振り返ったり、好きな趣味などに没頭したりすることによって築くことも出来ます。マインドフルネスのワークを行う事で自分の感情や身体に意識を集中することで自分を大切に想う心も芽生えてくることでしょう。そうやって時を過ごすことで、自分の中に自尊心が育っていることに気づくのではないでしょうか。
時間をかけて丁寧に安全基地を築いていくことそのものが、自尊心を感じる力を高めていくことにつながっていくのです。
●お気軽にお問合わせ・ご相談ください。
愛着の問題に対するカウンセリングにおいて、中には幼少期から育て直すことによって新たに愛着を形成することを目的として、カウンセラーが親の役割をしてハグをしたりするカウンセリングもあると聞きます。それを否定するわけではありませんが、当カウンセリングルームに於いてはカウンセラーがクライエントと身体的な触れ合いを通してのカウンセリングは行いません。カウンセラーはクライエントの問題解決のための信頼足り得る伴走者となることを心がけてカウンセリングに臨んでいます。愛着の問題に関心を持たれたり、同様の生きづらさを抱えていたりされている方がいらっしゃいましたら、よろしかったらウェッピーカウンセリングルーム日野宛まで、お気軽にお問合わせやご相談していただけたらと思います。お問合わせ・ご相談などは無料となっております。あなたの心が少しでも癒されることを願って。
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