性依存症とは?カウンセリングで性への囚われからの解放を目指す

性依存症の原因と弊害。回復に向けての取り組み。


セックス依存症イメージイラスト

 人間による悩みの多くに、性(セックス)に対する悩みが存在します。セックスに対する悩みはなかなか人に打ち明けづらい悩みでもあるので、一人で抱え込んで悶々としている方も多いのではないでしょうか。性依存はセックスだけではなく、自慰行為(マスターベーション)も含まれます。性欲自体は元来生まれ持った本能であるので、セックスを求める気持ち自体は自然なことです。しかしそれが、不特定多数との行き過ぎた性行為に走るとか、自慰行為への衝動が頻回で生活に支障をきたすとかなると話は別になります。本人自身もそのことに気づいてどうにかして行為を控えようと思ってもままならずに、自責の念が募り自己肯定感にも影響を及ぼしていく事もあり得ます。ここでは、性(セックス)に囚われる方の心の仕組みやその裏に隠れている物、そしてカウンセリングによる対処法などをご紹介します。性の問題で悩まれている方、ご関心を抱かれた方がいらっしゃいましたらぜひご一読いただけたらと思います。

●人はなぜセックスを求めるのでしょう?

 人はなぜセックスをもとめるのでしょう?動物には繁殖期(発情期)というのものがあって、子孫を残すためにその期間に性への衝動が高まり相手を求めて性行為を行います。しかし、霊長類である人間には発情期というものが無く、常に性への欲求は存在します。人間の悩みの中でも性への悩みが大きな比重を占める要因でもあります。動物であれば、性行為の目的は子孫を残すという事に比重が置かれるのですが、人間はその他にも愛への欲求や、快楽への欲求などが存在します。それには性別、年齢、そして個人により様々な違いがあって当然ですが、セックスへの欲求自体は本能として持ちうる自然なものです。そしてセックスを求める理由に対しても人それぞれ違いがあって然るべきものです。しかし、その欲求が相手の心を傷つけたり自分自身の心を傷つけたりするものであれば問題となってきます。

●セックスへの衝動の裏に隠されたもの。

 人は幼少期に心が傷つくと、性的な欲求が強くなる傾向があると考えられています。心が傷つく要因としてはどのようなものが考えられるでしょうか?養育者からの心理的・身体的虐待。また、性的虐待なども考えられます。あるいは虐待までいかなくても長期に渡る高圧的な態度を取られたり、自分の好きなことややりたい事を否定されたり、あるいは自分自身を否定されるかのような言動を取られたりして、緊張を要し安心できないような環境で育つことが考えられます。このような状況で背負う事になった心の傷を複雑性PTSD、あるいはアダルトチルドレン愛着の障害と呼ぶことがあります。反対に、行き過ぎた過保護や過干渉で育ってもプライドだけが高くなり、大切な自己肯定感や自信が育たないような場合も、性への依存心が高まるケースがあります。

 これらの要因に共通して存在するものとして、自己肯定感や自尊心の欠如、慢性的な孤独感や孤立感、疎外感、そして不安感や虚無感、離人感などが挙げられます。それらの心の空洞(寂しさや悲しみ、あるいは怒り)を満たそうとしてセックスやマスターベーションへ依存する傾向が見られるのです。

  また、マスターベーションへの依存などは強迫神経症的な要因も考えられます。マスターベーションをしないと性的機能が落ちるのではないか、セックスが出来なくなるのでは、などの不安から強迫的に自慰行為をしなくては、などの指令を自分に課してしまう場合などです。やはり、このような神経症的な思考の根っこにも傷ついた心が隠されている場合が多く見られるのです。

●性依存症の弊害とは?

 セックスやマスターベーションなどで、心の寂しさや不安感を埋める行為も、長い期間くり返し行っていると依存症と呼べるような状態に陥ることがあります。その段階になると、もはや自分の意思だけではなかなか制御することが出来なくなります。もうやめようと思っても、その衝動が沸き起こると繰り返さずにはいられなくなります。そうすると、元々低い自尊心や自己肯定感はさらに傷ついて自分はダメな人間だ、もうどうなってもいい、などと自暴自棄になっていくケースも存在します。不特定多数とのセックスに走ったり、セックスを仕事にしたりするなど、メンタルだけではなく身体的な健康も害することになる可能性もあります。あるいは、自尊感情が傷つくことで性への依存だけでなく、アルコールや薬物、自傷行為、摂食障害などの新たな依存症が加わる可能性もあります。また、マスターベーションにしても、一日に何度か繰り返したり、明日は早朝から大切な用事があるのに自慰行為の衝動が抑えられずに深夜まで起きていて翌日支障をきたすことになってしまったり、それでも同様の事を繰り返してしまい、やはり自尊感情がどんどん傷ついていく事になるなどのケースも考えられます。

●性依存症からの回復に向けたカウンセリング。

 性依存は、一人では解決することは難しい障壁です。なぜならば、自分の意志の力が及ばないケースがほとんどだからです。かといって冒頭にも述べましたが、性への悩みは例え同姓であってもなかなか話すことが出来ないテーマでもあるでしょう。これらの理由からも、有効な対処法(治療法)として考えられるのはやはりカウンセリングではないでしょうか?心療内科などのクリニックでも薬は処方されるでしょうが、薬で例えセックスへの衝動が緩和されたとしても対処療法に過ぎず、依存傾向のある方だと今度は処方薬に依存していく可能性も大いに考えられます。

 では、カウンセリングではどのように対処していくのでしょうか?まず大切なのはカウンセラーとの信頼関係の築きです。性的な悩みを話すには、それなりの信頼関係が無いと話すことは難しいでしょう。カウンセラーとの相性もありますが、ここは時間をかけて丁寧に行っていく必要があります。次に心理療法についてですが、今現在の行為に対する対処法を一緒に考えていくところから始めます。セックスやマスターベーションへの健康的な代替行為はないか?欲求の衝動に囚われた時の対処法は?など、マインドフルネスストレスコーピング(対処法)など有効と思えるその人ならではの対処法を紙に書き出して、実践するように取り組んでいただきます。併せて認知行動療法において、セックスやマスターベーションへの衝動が生じた時の思考・行動パターンを自己認識することで、それに代わる考えや行動を書き出して実践するように取り組んで参ります。また、フォーカシング療法などを用いてご自身の傷ついた感情にも焦点を当てていきます。性依存症の大元にある傷ついた心、現在の行為への対処など複数の方向から取り組んで参ります。その進め方は、その人に合ったタイミングやペース、方法で丁寧に説明して納得していただきながら取り組んで参ります。

  依存症に共通して言えるのは、傷ついた心が大元にある事で、一つの依存行為を無理やり抑え込んだとしても、それに代わる依存行為に走ることが多いという事です。それが健全な行為であればよいのですが、やはり自分自身を傷つける様な行為に走ることがほとんどと言ってもよいでしょう。カウンセリングで大切なことは自分自身の本来の姿に気づいていく事であり、もともと自分の中に存在している回復していく力に働きかけていく事にあります。カウンセラーはそのための道先案内人・伴走者といったところではないでしょうか。

●性依存で苦しまれている方や、カウンセリングにご関心を抱かれましたらお気軽にお問合わせください。

 ここでは、依存症と呼ぶに近いケースにフォーカスしてまいりましたが、まだご自身ではそこまでに至っていないと思われる方にもカウンセリングはお勧め出来ます。カウンセリングの目的は自分自身に対して客観的な気づきを得て、自分らしく、より良い人生を歩んでいくことにあります。この記事を読まれてご関心を抱かれましたら、お気軽にウェッピーカウンセリングルーム日野までお問合わせやご相談いただけたらと思います。あなたの心が少しでも癒されることを願って。