加齢による意欲の低下(うつ症状)で悩まれている方へ

加齢による意欲低下に向けたカウンセリングとは?


加齢による意欲低下のイメージイラスト

●なぜ加齢によって意欲(うつ症状)の低下が生じるのでしょう?
 年齢を重ねると、身体的、精神的だけでなく置かれている状況も変化してきます。わかりやすいところでいくと身体的には体力の衰え、精神的には集中力や記憶力の低下、状況的には定年による退職、子供たちの独立など。ある意味、喪失の時期と捉えてもよいかもしれません。これらは、人生を歩んでいく中で自然に生じる事です。しかし、自分のイメージの中では、まだまだ出来ていた時の事や仕事をしていた時、家族に囲まれていた時の事が頭にしみ込んでいて、なかなか受け容れるまでに時間を要するのです。例えば、苦にならなかった料理や家事をすることが苦痛になった、起きることが億劫になった、お風呂に入ることが面倒くさい、外出も面倒くさくなってきた、これらのことが積み重なっていくうちに罪悪感や自己嫌悪感に取り囲まれ、それがストレスになってさらに意欲低下をまねくということにつながっていくのです。これが進行していくと老人性うつ病と呼ばれる、重い時は希死念慮さえ生じるような状況になっていく事が考えられます。

●うつ病と加齢による意欲低下の見分け方。

 今まで出来ていたことに取り組む気力が起きないなどの自覚があると、うつ病ではないか?と心配される方も多いのではないでしょうか。うつ病自体の診断基準は存在するのですが主観的な要素も多く、以下のような現象が見られるとうつ病を疑うケースもあります。

●不安や焦燥感に囚われて抑うつ気分が何日も常態的に続く。

●今まで興味があったものへの関心が無くなってきた。

●食欲不振や不眠、あるいは睡眠過多、めまいや倦怠感など身体的な不調が続く。

●死んでしまいたくなるなどの希死念慮が生じることがある。

次に加齢に伴う意欲の低下について、いくつか挙げてみます。

●取り組むまでは億劫で時間を要するが、取り組み始めると今までとあまり変わらずに行うことが出来る。

●好きなことに関しては、取り組むことが出来る。

●全体的に意欲の低下は感じられるが、一日中寝込んで何もできないというほどではない。

●親しい人と会っている時などは、それなりに楽しむことが出来る。

 

いかがでしょうか。うつ病となると、医療的ケアなどによる投薬治療も必要になるケースもあるかもしれませんが、加齢に伴う意欲低下などで、うつ病と診断されて投薬された場合、服薬することで安心する方もいらっしゃるかもしれませんが、逆に本来持っている生きるための力が薬に頼ることで損なわれていくケースもあるので、注意していただきたいと思います。

●カウンセリングによる意欲低下への取り組み。

 それでは、カウンセリングではどのように加齢に対する意欲低下に取り組んでいくのでしょうか?以下に効果が認められる心理療法をいくつかご紹介します。

●認知行動療法(CBT:自分の思考・気分・行動パターンを客観的に捉えることで、うつ的な思考からポジティブな思考への変容に取り組んでまいります。思考が変化すると気分も変わり、行動する意欲も上がってきます。

●ナラティブセラピー:心理学者のエリクソンが提唱したライフサイクル論によると、人生におけるそれぞれのステージによって生じる課題が提唱されています。老年期では「自我の統合vs絶望」となっています。今までの人生において良いことも悪いことも含めて、これでよかったと受け入れられると自我が統合されて、充実感や幸福感を得ることが出来ます。反して、今までの人生がネガティブに感じられて受け入れがたいと、いずれはやってくる死に対する恐怖が勝って絶望感に囚われます。この絶望感がストレスとなり、意欲の減退、ともするとうつ病発症の原因ともなりかねません。ナラティブセラピーではカウンセラーとの対話を通して、今までの人生において見過ごしてきた、嬉しかったこと、幸せに感じた事、努力してきたことや達成してきたことなどの良かった点に焦点を当てて、人生に対する感じ方の変容を目指していきます。過ぎ去った人生そのものは変えられなくても、受け止め方が変わるだけで、現在の人生の捉え方や感じ方も変化するのです。

●マインドフルネス療法:マインドフルネスの定義はありのままを受容することにあります。瞑想による呼吸法などを通して、自分の身体感覚に集中したり、あるいは自分の感情に寄り添ったりすることで、ありのままの自分を受け容れ、やがて自己肯定感も上がってきます。リラックスして、身体の感覚を整えることで不安感などが解消されて、頭がスッキリする効果もあります。日常的に取り入れることで気分の落ち込みや意欲低下の改善が図れます。

 ここに挙げたほかにも、気分転換に絵画療法などを用いたり、対話を通して気分を明るくしたり、楽しみながらカウンセリングを行っていくことも出来ます。その方に合った心理療法を丁寧に説明して納得していただいた上でカウンセリングは行われていきます。気分の落ち込みや、意欲の減退を感じて悩まれている方や、カウンセリングに関心のある方は、お気軽にお問合わせください。あなたの心が癒されることを願っております。