愛着とはイギリスのボウルビィという精神科医・心理学者が提唱した理論でアタッチメントとも言います。乳幼児期に母親との間に健全な関係が結ばれ、無条件で愛されている、何かあった時には助けてくれる、など情緒的な安定を得ることで生まれる絆、それが愛着（アタッチメント）です。しかし、母親との関係がうまく機能せずに育つと、自分の中に安心という感覚を得ることが出来ないままに成長することになります。それはやがて人間関係を築くことに対して大きな壁となって立ちはだかることになるのです。

　その壁とはどのようなものでしょう？ここでは主に恋愛関係において述べたいと思います。人間は本能的に安心・安全への欲求を持っていますが、愛着に問題をお持ちの方は安心という感覚を持てないままに成長してきたので、その欲求が特に強く、それを相手に求めるようになります。ここに支配と依存といういびつな関係が生まれます。安心を得たいがために相手を人生の全てのように感じて、精神的にも生活面においても相手をとにかく最優先するようになります。相手のために時間と労をつぎ込み、時には金銭もつぎ込んでしまう事すらあります。

　それだけであればまだ自分の側の問題なのですが、さらにやっかいなのは相手にも同等のものを、時にはそれ以上のものを求めてしまうところにあります。そして相手をコントロールしようとしてしまいます。するとどうなるでしょう？付き合い始めの頃は、愛しいという感情を抱いて相手も応えていたとしてもやがて耐えられなくなってきます。そして相手との間に距離が出来始めると愛着に問題を抱えている人はそれを敏感に感じ取り、不安から恐れへ、やがては恐怖となり、その苦しさゆえに時としてストーカーまがいの行動に出てしまうこともあり得るのです。

　しかし、本人にはその行動が自分では、このようなことをしたら結局は破綻してしまうかもと感じていても、その衝動は自分では抑えることが出来ないほど強く苦しんでいるのです。時には相手の関心を引き寄せるために、またその苦しみから逃れるために自傷行為に走るケースも見られます。この様なケースはかなり愛着の問題が深くて強い方に見られることですが、ここまで至らずとも同じような苦しい感情をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか？

　健康的な恋愛関係とはどのようものでしょうか？人それぞれ年齢、性格、生きてきた環境など違いはもちろんありますが、普遍的な考えとしては、愛情を持ってお互いに思いやり、信頼し合い、助け合えるような関係ではないでしょうか。これは、自分の考えを押しとどめて相手を優先するというものとは違います。自分の事も大切にして、相手も大切に想うという事です。この考えの土台として必要なことはお互いに精神的に自立しているという事です。

　愛着に問題を抱えている方は、相手も同じような問題を抱えている人を敏感に察知して惹きつけ合うようなところがあります。愛着に問題をかかえている方はどことなく寂しげで相手の同情心を刺激（かまってあげたくなる）したり、また自分の寂しさも埋めてくれそうな人（甘えられる）を求めたりする向きがあります。その裏返しで、寂しそうな人を求めて自分の愛で満たしてあげたくなるケースもあります。そうした関係は、付き合い始めのうちは波長があってとても心地よく感じるかもしれませんが、お互いに寄りかかって求めあう関係（支え合う関係とは違う）なのでやがては破綻してしまいます。破綻したとしても、また同じようなタイプの人を求めて同じパターンを繰り返してしまいます。中には、別れてはしばらくしてよりを戻すなどを繰り返すケースもあります。

　この様な恋愛の苦しみのパターンから解放されて、安定した恋愛関係やパートナーとの関係を結びたい方は、愛着の問題があるかどうか一度カウンセラーなど専門家の話を聞いて、もし自分で問題があると思われた方は、愛着の問題に取り組むことをお勧めいたします。

 　愛着の問題に関するカウンセリング療法など知りたい方や、カウンセリングにご関心を抱かれた方はお気軽にウェッピーカウンセリングルーム日野・東京までお問合わせいただけたらと思います。あなたの心が癒されることを願って。