親の支配から、自らを解き放つ
●スキーマ療法とは?
スキーマ療法は、アメリカの心理学者ジェフリー・ヤングによって提唱された心理療法です。スキーマ療法のスキーマとは、主に幼少期において周囲から受けた影響で身につけた「信念」の事を言います。周囲とは養育者、つまり親からの影響が最も大きいと言っても過言ではないでしょう。そのスキーマ、つまり信念は無意識の領域に近いところで身体の奥深くにしみ込んでいます。それが人間関係を築くための土台ともなっていて、その人の人生を左右することになります。そのスキーマが健康的なものであれば、幸せな人生を歩んでいけると思われますが、不健康なスキーマであれば不幸な人生を歩んでしまう事になりかねません。スキーマ療法は、不健康と思われるスキーマに働きかけて、より健康的なものへと変容を図ることでそれまでの苦しみからの脱却を目指すものです。
●生きづらさの要因となるスキーマとは?
スキーマ療法では、生きづらさの要因ともなるスキーマを「早期不適応スキーマ」と呼びます。主に幼少期や思春期に形成され、人間関係を築く障壁ともなるスキーマです。養育者から適切な愛情を与えられなかったり、虐待やいじめなどを受けたりとアダルトチルドレン、複雑性PTSD(トラウマ)などを抱えた方に多く見られるスキーマです。
早期不適応スキーマにもいくつかパターンがあり、代表的なものとしては「見捨てられ/不安定スキーマ」や「欠陥/恥スキーマ」などがあります。懇意にしている人に対しても、いつかは見捨てられてしまうのではないか、失敗して恥をかいてしまうのではないか、等に対する強い恐怖の感情が存在し、対人関係、社会生活を送る上での強い障壁となって立ちはだかります。他にもいくつものパターンが存在し、そのパターンを併せ持って苦しんでいる方がとても多いのです。
●スキーマの苦しみから生じる「モード」とは?
早期不適応スキーマの苦しみから生じる思考、感情、行動のパターンを「スキーマモード」と呼びます。見捨てられ/不安定モードにおいては、「チャイルド・モード」が現れて怯えている子供のような状態が表出します。また、「不適応対処モード」を使って他者に服従したり、感情を抑圧したりすることでスキーマの苦しみから回避する行動も見られます。この他にも、親が批判的で怒りっぽかったりすると、その影響が内在化されていて怒りで相手をコントロールしようとする「非機能的ペアレントモード」というものもあります。いずれにしても健康的で良好な人間関係を築くこととは相反するモードで自分自身を傷つける事にもなり兼ねません。
モードには「ヘルシーアダルトモード」というものも存在します。その名の通り精神的に健康な大人としてのモードです。不適応なモードをこのヘルシーアダルトモードに切り替えていくのもスキーマ療法の大きな目的です。
●スキーマ療法の取り組み
では、具体的にはどのようにして自分を苦しめているスキーマに取り組んでいくのでしょうか。アプローチの方法はその目的に応じていくつか存在します。認知行動療法や交流分析的技法を用いて、自分を苦しめているスキーマを発見していきます。そのスキーマが現在の人間関係においてどのように影響しているのかを客観的に見ていきます。その上でよりよい思考や行動を考えて実行に移していきます。スキーマに関しては、それを手放すために再決断療法などを用いることもあります。また、苦しい感情を癒すための療法として重要なのがマインドフルネス療法です。このように、クライエント(相談者様)とカウンセラーとでよく話し合い、ベストと思われる療法を適宜組み合わせて行っていきます。スキーマに向き合っていく事は過去のトラウマともなっているような心の傷に向き合う事でもあり、時として辛く感じることもあります。カウンセラーの支えの元、無理のないように行っていくため、根気と時間を要する心理療法でもあります。しかし、根気よく丁寧に取り組んでいけば必ずやその成果は現れてくることでしょう。
スキーマ療法やカウンセリングにご関心を抱かれましたら是非お気軽にウェッピーカウンセリングルーム日野・東京までお問合わせください。あなたの心が癒されますように。